辻斬り

「そこは辻斬の本来の習性だ」
「あん?」
「パンチンググローブはめて鏡を見て、まるで自分は格闘家! なんて思い込んで、一度で良いから思いっきり殴ってみたいってのと同じっぽいってこと」
「同じじゃねえだろ、そういうのはジムに行けってんだ!」
「ナイフや刀持った人間がどこに行けっていうのよ」

灘はあきれて押し黙る。バカだ、バカの極みだ。

「さすがに問題になって警察が捜査に乗り出したんだけど、そのときに検挙された側は敗者、未検挙の側は――」
「勝者の側ってわけだ。人の命を軽く弄びやがって」

灘はタバコを吸いながら世を嘆いた。