辻斬り

「赤田は辻斬りの呪い、それを生み出すことのみに妄執していましたが、しかし生み出された今、模倣者たちは赤田の凶行になぞらえて無作為に人を襲う、それだけですみます。悪質ないたずらから、純粋な殺意まですべて辻斬に託す——

【さっさと死んでくれないかな、あいつ】

そんな軽い気持ちでメールを送信して、自分が頼んだ願いが、どこからともなく現実となることにみんな恐々嬉々としてしまって…もちろん怖いとも思うけれど、誰彼なくいやな人間ってやっぱいるものでしょ? それがいなくなったって、それだけでもう。そこからはまるでゲームのように氾濫し、時の総理大臣まで付け狙われる始末。噂では総理も誰かにメールを送ったりしていたとか……」
「でも総理大臣は死んでいない」
「あったり前だ。一国の首相がそんな馬鹿げたことで!」

灘は膝を叩いて断言する。

「ええ。このように願えば必ずしもかなうわけじゃありません」
「――なんだと?」

あゆみはぼそぼそと説明した。