鴻上は無言のまま、運転席のシートを強引に破る。
するとそこから、一丁の拳銃が出てきた。
決して誰にも見られぬようにそれを懐にしまった。
「あの赤田が、この中に――」
鴻上は苦々しくそうつぶやいた。
この時点ではほかの誰もが、鴻上のその表情の意を知る由もなかった。
「勝手気ままついでだが――さっきの話、忘れるな」
灘は誰彼に聞こえるよう念を押す。
「兵吉ののろいは、やっぱ本物かも知れねえ。霧の中から鬼が沸いて出るなんて真に受けるわけじゃないが、昔、俺の親父がなあ……」
酔っ払いのくだ巻き程度にしかみんな受け止めなかった。
するとそこから、一丁の拳銃が出てきた。
決して誰にも見られぬようにそれを懐にしまった。
「あの赤田が、この中に――」
鴻上は苦々しくそうつぶやいた。
この時点ではほかの誰もが、鴻上のその表情の意を知る由もなかった。
「勝手気ままついでだが――さっきの話、忘れるな」
灘は誰彼に聞こえるよう念を押す。
「兵吉ののろいは、やっぱ本物かも知れねえ。霧の中から鬼が沸いて出るなんて真に受けるわけじゃないが、昔、俺の親父がなあ……」
酔っ払いのくだ巻き程度にしかみんな受け止めなかった。


