辻斬り

懐から取り出したワンカップをぐいっと飲み干すと、じい、と紀伊の顔をしばらく覗いた。紀伊の表情は微動だにしない。

「…だんまりか? まあいいだろう。現行犯逮捕ぐらいお手の物だ」
「捕まえるつもりか? のんきなものだ。寝首をかかれるのがオチだぞ?」
「人数はこっちが上なんだ。私人による集団逮捕といこうじゃないか?」

灘は「かっかっか」と上機嫌な笑い声だ。
昔取った杵塚にたいそうな自信を含ませながら木霊にあわせて響いていく。