辻斬り

「――妙だな」
「あ?」

紀伊は呟いた。
灘はそれに呼応する。
死体をじっと見つめ、紀伊はそれに対し彼なりの分析を始めた。

「こんなえげつない殺し方しているのは、大概が何かを無理矢理に隠そうとしているからによるものだ。それに――ここはやけに硝煙臭い」
「ルポライターさんよ。あんた、ここに脱走犯が潜り込んだと思うかね?」
「……」
「俺ぁよお、村を出てはじめて見たテレビのニュースで、人が死ぬってのがどんなんか知ったんだよ。ありゃあ、ベトナム戦争末期、粛清される反乱軍兵士の姿だった。こめかみに銃口を突きつけられると、あっという間にぱぁんと撃ちぬかれる。打ち抜かれたこめかみから血が一直線にただれ落ちていく。ピューッと一直線にな。——ああ、死ぬってなあ、こんなにあっけなくて、分かりやすくて、そして虚しいもんなんだ、と画面を通して知ったんだよ。俺ぁな、刑事になってこうやって取り繕われた死体を見るたびに、そこにある意味を考えたくてしょうがなくなるんだ」
「……」
「ま、どうせわかりゃあしないんだがな」