辻斬り

「オートマ車なんて、ゴーカートみたいなもんでしょ。楽勝楽勝♪」

女たちは帯同して車へと向かう。
紀伊は呆れてそれを見ていた。
霧に包まれすっかり白く変わり果てた森はまるで雲の中を歩くようだった。
雲の中の散歩――そう考えたら心地よいだろうが、そんなことに思い浸る余裕は、この場においてとてもありえない。

「そういえばイケメン崩れは?」
「タッキーあんた知らない?」

大熊はいつの間にかタッキーと呼ばれていた。
ただ今この状況下、なんと呼ばれようがいいから、無事に帰りたい気持ちでいっぱいだった。