『美緒、言っとくけど、バンド内恋愛は絶対禁止だからな!!』


バンドを始めた時に交わした約束。

あたし、ちゃんと守っていたし、これからも守るから。



間奏に入ると、サビの勢いそのままに、楽器に思いを込める。


ゆーたのギターソロは夕暮れの空気に溶けていき、

心臓音のような良夫さんのドラムのビートと合わせて、

お客さんを夕方から夜の空へゆっくりと導いていく。


王子のベースもそれに絡まるように、メロディーを奏でていく。

低音から高音へ。

リズムの隙間を優しく埋めるように、4弦の音をやわらかく操る。


あたしは、3人のリズムにのって、頭を下に揺らし、ギターの和音を響かせる。


頭を上げた時、ちらっと、王子を見た。


王子も、それに気がついたようで、音にのりながらあたしの方向に瞳を向けた。


ドクン、と心臓が跳ね上がった。


そして、王子は、文化祭の時と同じように、

一瞬、優しくて、愛おしいその笑顔を見せてから、目線を外した。



うん。


今日だけ。

今日だけはいいんだよね。