「え?」
「……不安なことここで全部吐き出せ。でも泣くなよ。鼻声になるから」
上から王子の優しい声が降ってくる。
あたしはゆっくりと立ち上がった。
「俺が全部受け止めてやるよ」
そう言って、王子は軽く頷いた。
その瞬間、あたしの体中から、思いが、言葉が、溢れだしていくことを感じた。
「あたしの歌ってキモイんだよね。皆もそう思ってるのかなぁ。本番でも声が出なくなったらどうしよう。
今日すごいバンドだって出てるし。優勝できなかったらどうしよう。だって優勝しないとバンドが、バラバラになっちゃう」
「うん」
「優勝したらデビューできてバンドでご飯食べていけるでしょ。そしたらゆーたも就職しなくていいし。
王子もオーディション行かないでSTARFISHに残ってくれるかもしれないのに!」
「うん」
「あたしは皆とずっとSTARFISHやっていきたいよ! でも楽しいだけじゃ続けていけないことも分かってる。本番声が出なくなったらどうしよう。怖いよ……」
どうしよう、止まらないし、同じことがぐるぐると口から出てきちゃう。
きっと王子も困ってるよね、こんなグダグダなあたしに。
あーだめだ! 何でこんなにネガティブなんだ!
気がつくと、前のバンドの演奏が終わったようで、
インタビューらしい話声がぽつぽつと聞こえてきた。
「おーい、あいつらどこいった?」
「お客さんのエリアにはもういないみたい……」
「どうしましょう、もうすぐスタンバイですよぉ」
ゆーたと雪乃さんと良夫さんの慌てた声も楽屋ゾーンの奥から聞こえてきた。
うぅ……こんな気持ちのまま本番を迎えるの!?

