「うるさい! 貴也様の応援するのにお前が邪魔なんだよ! 何で貴也様と一緒にバンドやってるんだよ!」
そう叫ぶカナタちゃんの目には、涙がたまっているように見えた。
それにつられ、あたしも、のどの奥がつんと痛んだ。
「カナタちゃん……」
ふと長袖のフリルで隠れたカナタちゃんの左腕を見ると、
赤く刻まれた傷を思い出した。
同時に、どっくん、どっくん、と心臓が嫌なビートを刻んだ。
あたしは、目に涙の量が増えていくことを感じ、言葉を発することができなくなっていた。
何かを言おうとすると、喉がひくっとなりそうで怖い。
もうすぐ本番なのに……。落ち着け、あたし!
その時、
「あ……!」
と声にならない声を発しながら、カナタちゃんは目を見開いて、あたしのすぐ後ろを見ていた。

