「はぁ、はぁ。いや~女の子って怖いね~」
カナタちゃんを引っ張り、飲食コーナーのベンチまで戻ってきた。
ライブを見に行っている人が多いためか、ちょうどこのエリアに人は少なくなっている。
息切れが止まらないまま、空いているベンチに2人で座った。
見渡す限りのお客さんたちの奥。
ステージが見える。
夕方が近づくにつれ、ステージの照明は色がより浮かび上がっていく。
風に乗って今演奏中のアーティストの曲が流れてきた。
「…………」
カナタちゃんは相変わらず無言のまま。
あたしのことを見ようとはしない。
でも、ぐっと握られた固い拳は、小刻みに震えているように見えた。
「カナタちゃん、今日は来てくれてありがとう!」
構わず、あたしは下を向いたままのカナタちゃんに、笑顔で声をかけた。
「……んで?」
「え?」
「何で? あたしあんなにひどいこと言ったのに……」
「うん……もちろんあれは悲しかったよ。でも、カナタちゃんは大切な友達だから」
あたしがそう言うと、カナタちゃんは顔を上げ、
突き刺すような目であたしを睨みつけた。

