王子様は帰り支度をすると言って、いったん自分のクラスに戻って行った。
「C組に良さげなドラムいるらしーんだよ」
とりあえず教室を出ると、ゆーたがひと足先に廊下で待っていた。
黒い大きなナイロンのギターケースを背負っている。
マイギターかな?
「わりぃな、今日お前用事あるっつってんのに。貴也の奴がどーしても3人でそいつに会いに行くとか言いだして」
「へぇー、C組かぁ。どんな人なんだろね」
「噂では、子どもの頃からドラムやっててマジ上手いらしーけど、バンド組んだことねーっつーの」
「え? 何で何でー?」
「もしかしたら、生半可なバンドとは組まねーとかそんなんじゃね? いいねーそういうの。マジ楽しみ」
獲物を捕らえるような目で、ゆーたはそう言った。
何で楽しみなの!?
そんな上手い人だったら、あたしはビビるよ!

