ライブ終盤なのに、今、1人お客さんが入ってきたようだ。 誰だろう。 呼んだお客さんは皆フロアにいるはずなんだけど。 黒くて長い髪の毛。 黒いフリルがついた長袖のワンピ。 スローモーションでフロアの中に姿を現す。 あ……だめ! 今は見ちゃだめだ。 そう頭がSOSを発しているのに、あたしの視線はそこから動かない。 たくさんの音と人と拳の奥に見えたのは、 1人だけ時間が止まったかのように、ステージをぼーっと眺めている、 カナタちゃん――。