「惑わされんなよ。ファンはファン。ダチはダチ。貴也もそこは上手く線引きしてるし。
ファンとコミュニケーションとる時は、ちゃんとSTARFISHの美緒として接しろよ」
「へ?」
「ま、よーするに、あまり深入りすんなっつーこと。あいつは貴也のファンだべ」
重そうなギターを背負いながら、
ゆーたはポケットに手を入れながら歩く。
「でもあたしの歌好きって言ってくれたから……」
あたしはスカートをぎゅっと握りながら、ゆーたに反論した。
カナタちゃんは王子のファンかもしれないけど、
その言葉に嘘はないと信じたかった。
だって、あたしの歌を好きって言ってくれたこと、本当に嬉しかった。
「ま、確かにおめーの歌は俺も好きだわ」
「おっ、ゆーたが褒めるの珍しい」
「もし何かあっても、バンド……絶対続けろよ」
「…………」
奥の道を走る車の音で半分かき消されたゆーたの言葉。
何て返したら良いかわからなくて、でも少し目の奥がつんとしたあたしは、夜空を見上げることしかできなかった。
別れる時、色々言いたいことはあったけど、
「ゆーた。青春スターダム、優勝しようね!」
とだけ、伝えた。
すると、
「あたりめーだ。ばーか」
と言って、ゆーたは片手を挙げて、自分の家の方向へ帰って行った。

