「ううん。お母さん大変なんだね」
「まーな。気持ちだけは若いけどあいつ結構疲れてるし。
でも俺の職場、社員になっても仕事はだいたい定時で終わっから、平日もライブできなくはねーんだけど。
……でも、それじゃ貴也は満足しねーよな」
確かに、王子は卒業したらライブで全国を回ったり、新しいCDを作ったりすることを考えていたようだ。
ガタン、ガタン、と心地よいリズムで電車は橋を渡っている。
それに合わせてゆーたのギターケースについている、キーホルダーもじゃらじゃらと揺れる。
尊敬する有名パンクバンドのグッズらしい。
「そーいえば。あいつの……貴也のじーちゃん、年もあれだし体調も良くないらしーし、もう日本に中々来れねーんだって」
「え……?」
「いつか自分がバンドでベースやってる姿をじーちゃんに見せたい、ってあいつ言ってたわ」
あ、この前――
『アメリカデビューできたら君のおじいちゃんも喜ぶんじゃないかな?』
って、王子がディレクターの人に言われていた。

