青春スターダム本戦までは、壮行会だけしかライブが無いため、メンバー4人で集まるのは週2~3回のスタジオ練習のみになっていた。


ゆーたは空いてる時間で、知り合いのミクスチャーバンドのサポートギタリストをやっているらしい。


「俺も貴也と張り合えるよう、まだまだ修行しねーとな」と教室でゆーたは呟いていた。


ゆーたも聞いてたんだ。

王子にはスターになれる素質があるって話を。


今日ライブあるけど見に来る? ってゆーたに言われたため、放課後あたしは1人で渋谷に向かっていた。


人でごった返しているスクランブル交差点を歩く。


制服を着た中高生、大学生っぽい若者たち、サラリーマンやOLさん、派手なお兄さんお姉さんなど、たくさんの種類の人がいる。


その中には、ギターケースを背負ったり、黒いケースに包まれたドラムをカートで引いているバンドマンらしき人もいた。


その姿を見たら、少し胸がずきんと痛んだ。


皆、バンド頑張ってるのかな。

いろいろな事情をかかえながら……。



仕事をしないで、学校にも行かないで、バンドマンとして生きていくのってきっと大変なことなんだろう。

ライブで地方を回ったり、機材を買ったり、CDを作ったり……お金だって必要だ。


もちろん卒業後もバイトは続けるつもりだけど、バンドで成功しなければどうなってしまうのだろう。

ずっとフリーターのまま?


――いや、そんなのはイヤだ。