「あ、あたしもみんなにチョコ作ってきたよー!」
少し重い空気が漂う中、あたしは片手サイズの箱を3つ、鞄から取り出す。
「……お、おう」
王子とゆーたは、何かを恐れている顔でそれを受け取った。
「美緒さん、ありがとうございます!」
嬉しそうに受け取る良夫さんは本当にいい人だ~。
「ねー開けてみてよ。3人のイメージに合わせた形にしてみたから!」
スタジオには練習を終えたグループと、これから始めるグループが入れ換わり出入りして行く。
ミーティングスペースの椅子とテーブルでも、派手なバンドマンたちがタバコを吸ったり、談笑したりしているため、店内はざわざわしていた。
そんな中、あたしたちのテーブルだけ、時間が止まっていた。
「……あのぅ、どうかな?」
「…………」
目の前の王子、ゆーた、良夫さんは、
箱を開けた瞬間から、何も言葉を発してくれない。

