「あと、貴也様はあたしの救世主様なんです」
「へ?」
冷えた風に黒髪を揺らしながら、カナタちゃんは続けた。
「あたし、中学の時、不登校気味っていうか、ネクラな子だったし、学校にもあんまり行ってなかったんです」
聞くと、複雑な家庭環境で育ったカナタちゃんは、中学3年生の頃この町に引っ越してきたらしい。
今よりも性格が暗かったらしく、友達も中々できず、次第に学校も欠席がちになってしまったという。
「半分引きこもってたくらいの時、たまたま近所のライブハウスに行ったんです。
もともとはビジュアル系バンドが目当てだったのですが、対バンで出てた貴也様を見て、一目惚れしちゃいました!」
去年のことか。
ザ・クリントンズの皆とバンドやってた時かな。
少し肌寒い、灰色の空。
雲越しに太陽の光が、あたしたちを緩く照らす。

