ふわっと、アコースティックっぽい優しい音色が溢れだす。 あ、これ……ミディアムバラードのあの名曲。 ゆーたの左手は次々と形を変えながら、 弦を器用に押さえ込む。 ゆーたギター弾けるんだ。 すごいなぁー。 「うん、歌える! でも歌詞見ないと分かんない」 「んなもん携帯でさっさと調べろよ」 王子様は行儀の悪い座り方で、あたしを睨みながらそう言った。 ん? 睨むって言っても、さっきみたいに恐怖感を与えるものではなくて、 何かを見極めようとしている目に見えた。