王子はだらだらとその声の方向――コテージの横側に歩き出した。
暗くてその声の犯人たちは見えない。
ちょ、ちょっとちょっとーー!
そして、近くにあったクヌギの木の幹を、足裏でドカッと蹴った。
がさがさがさ、と木が揺れ、葉っぱ同士がこすれあう音が不気味に響く。
「…………!?」
ようやくあえぎ声が止まった。
って王子ーー!
なに邪魔してるんすかぁぁーー!?
「にゃーん」
あたしは、ネコの物まねをしてみた。
「何だ、ネコか……」
そうつぶやく声が聞こえた。
そして、行為が再開されたようだ。
あーもう! ヒヤヒヤしたよ!
「もーーー! 王子、あっち行こ!」
たえられず、あたしは王子の腕を引っ張って駐車場の方向に進んだ。
「ちっ、俺様は禁欲生活してるっつーのに」
知らんがな!

