「あー、くそ重かった!」
ドスン!
と、王子様のその言葉とともに、ようやくあたしは解放された。
く、くそ重いって。ムカ。
王子様がくそとか言っちゃダメですよー。
屋上にはあたしたちの他に誰もいない。
5月の曇空。
少しだけ肌寒い風が吹いていた。
「お前、せっかく俺様が呼んでやってるのに、逃げるとはいい度胸してるよな」
そう言って、王子様があたしに近づいてくる。
えーと、えーと、落ち着けあたし。
この前読んだ、俺様王子様×平凡なあたし系のケータイ小説を思い出す。
セオリー通りで行くと、王子様は、実はあたしに一目ぼれしてたとかで、
いきなりチューしてくるんだっけ?
って、えぇぇえ!? チュー!?
「おい……」
王子様の美しい顔が更に近づいてくる。

