そういえば、

バンドをやり始めた時とは楽しさの種類が変わってきた。


ライブをして、お客さんが来てくれる。

良かったよ、と声をかけてもらったり、

ライブのオファーをもらったり、

色んな人に手伝ってもらったりする。


バンドが4人だけのものじゃなくなってきた。

これって、本当にすごいことだと思う。



「しゃ! あとは歌録り、頑張れよ!」


ゆーたはあたしの肩をたたき、先に建物の中に戻って行った。


よっし、頑張ろうじゃないの!


スタジオへ戻ると、良夫さんがカシワギさんに機材について色々教えてもらっていた。


「おい、のどの調子はどうだ?」


その後ろで座って音楽雑誌を読んでいる王子が、あたしに声をかけた。


「ばっちりだよ。まかせといて!」