「同じ学校以外のお客さんもボチボチきてるな」
そう言いながら、パイプ椅子に座って、王子はベースを指で鳴らしていた。
「おーよ、貴也と俺が新しいバンドやるってことで来てくれた奴もけっこーいるし」
ゆーたがギターをケースから出しながら、得意げに言った。
もうすぐ始まるんだー。
そわそわとあたしは鏡に向かって髪の毛を整える。
『ありがとー! ザ・クリントンズでしたー!!』
クリントンズの演奏が終わった。
も、もうすぐだ。
ど、ど、どうしよう。
き、き、き、緊張してきたーーー!
歌詞間違えそうだ。
高い声で裏返っちゃいそう。
鏡に映る自分の顔、血の気が引いていくのが分かる。

