「あたしはそんなコトバを聞きたいんじゃない」
茜の声に誰もが驚く
茜の声はスイッチを切ったはずの受話器からみんなの耳に入ったのだ
「茜…」
「勝負する前から弱気になってんじゃねーよ。」
監督が動けなくなった俺の横で、スピーカーのボタンを押した
「野球って何が起こるか分からないから楽しいんだ。なのに、最初から負けると思っていたら何も起こらない。何も始まらないんだっ」
茜の言っていることは、ごもっとも
現に俺は何を言ったらいいのか分からなくなってた
「お前は一人で戦っているんじゃないんだ。傍には支えてくれる仲間がいるだろ?」
仲間…
「果梨先輩…」
槙原が俺の肩に手を掛けた

