思わずみなもの目が大きく開かれる。

 本当にこの人はよく見ている。
 初めて会った時も、注意深くこちらを見続け、心のわだかまりを見抜いていた。
 あの薄氷の瞳は、隠そうとすればするほど、秘めていたものを映し出してしまう。そんな気がしてならない。

 見抜かれてしまうなら、いっそ曝け出してしまおうか。
 きっとそのほうが話は早い。
 己を隠すことを観念すると、やけに肩から力が抜けた。
 
「確かにレオニードの言う通り、俺はここから離れる口実を考えているよ。早く仲間に会いたいのは本心だけど……でも、それ以上に――」

 みなもは言葉を止め、長息を吐き出す。
 軽く目を閉じてレオニードの姿を隠してみると、言いたいことが口から自然に零れてきた。

「――貴方のそばに居続けることが、辛いんだ」

 レオニードの息が一旦途切れた後、戸惑い気味に「すまない」と口にした。

「俺は自分で気づかない内に、君を傷つけていたのか?」

「そうじゃないんだ。レオニードが俺の力になろうとしてくれて、すごく嬉しい。今までこんなに誰かを頼るってことがなかったから……」

 一人でいた時、いつも寄り添っていたのは、寂しさや苦しみ。
 これが当然だと思っていたから、耐えられた。
 けれど、こんなに温かくて安心できる場所を知ってしまった今、ここへ留まり続けるほどに、身動きが取れなくなってしまいそうな気がしてならない。

 みなもは薄目を開けて、レオニードと目を合わせた。

「貴方の隣は、すごく居心地がいいんだ。ずっと離れたくないって思わせてくれるほどに。でも……それじゃあ仲間を探しに行けなくなるし、レオニードを困らせることにもなる。同性に貼り付かれ続けるなんて、貴方にとって迷惑でしかないだろ?」

 話の途中から、レオニードの表情が強張っていく。
 こんな愛の告白のようなことを男から言われて、さぞ面白くないだろう。
 頭では分かっているが、彼の顔に嫌悪する表情が浮かぶのを見るのは辛くて、みなもは背中を向けた。

「ごめん、嫌な思いをさせるようなことを言って――」