「そんなに臭う? 年がら年中やってるから、慣れちゃってさ。悪いね」

「スゲー、オレだったら絶っ対ムリ……あ、そうそう。母ちゃんがさ、頭が痛いから薬をくれって」

「分かったよ。ちょっと待ってて」

 若者は立ち上がり、後ろにある棚をジッと眺める。大小様々な壺を並べているが、よく売れる薬は棚の三段目に置いてあった。

 青地の壺に手を入れると、予め取り分け、紙に包んだ痛み止めを取り出す。そして、隣の緑地の壺にも手を伸ばそうとした。

「お母さんは寒気がするとか、熱っぽいとか、言ってなかった?」

 少年は「んー」とうなって考えてから、ハッとなる。

「そういや、朝からずっと「寒い寒い」って言ってたや」

「きっと風邪だね。痛み止めの薬と一緒に、体を温める薬も渡しておくよ。こっちは俺のおごりでいいから」

 軽く若者が片目を閉じ、二つの薬を手渡す。
 と、なぜか少年は頬を赤く染め、慌てて銅貨を一枚支払ってくれた。

「あ、ありがと、みなも兄ちゃん!」

 力一杯に腕を振り、少年は来た時と同じように駆け足で小屋を出て行った。