◇◇◇◇◇◇◇◇◇
みなもの手伝いを終えてから、レオニードはボリスの様子を見に兵営へ向かう。
多くの兵士が敷き詰め合う室内は、一足踏み入れた途端、熱気とともに血や汗の臭いが鼻につく。
解毒剤ができる前は、誰もが呻くばかりで寝返りも一苦労といった状態だった。
しかし今は毒の苦しみから開放されている。回復した人間の中には、体を起こして近くの兵に話しかけている者もいた。
レオニードは部屋の奥まで行くと、隅で仰向けになって寝ている青年――ボリスの元へ向かう。
こちらに気づいた彼は、鈍い動きで包帯だらけの体を起こした。
毒にやられる前と比べ体の筋肉は落ち、腕は細く、頬もこけている。
ただ、小さくも丸い青の瞳だけは、以前のように生気が宿り、人懐っこい愛嬌を滲ませていた。
「やあ、レオニード。ここにいると退屈するから、何度来てくれても嬉しいよ」
「具合はどうなんだ? さっき来た時は、熱にうなされていたが……」
レオニードが枕元にある椅子へ腰かけながら尋ねると、ボリスは小さく頷いた。
「今は落ち着いている。あー早く元気になって、お腹いっぱいゾーヤ叔母さんの料理を食べたいなあ」
ボリスは力なく笑うと、おもむろにレオニードの後ろへ視線を移す。
何を見ているのかと、レオニードはその視線の先を見る。
部屋の中央では、みなもが負傷兵の傷を診ていた。
城では藥師だけでなく、治療を施す医師も不足していると知り、みなもは手伝いたいと申し出てくれたのだ。
色の薄い肌や髪の人間ばかりいる中で、みなもの黒髪はとても目立つ。
その姿にレオニードは目を奪われる。
が、ボリスの含み笑いで我に返った。
みなもの手伝いを終えてから、レオニードはボリスの様子を見に兵営へ向かう。
多くの兵士が敷き詰め合う室内は、一足踏み入れた途端、熱気とともに血や汗の臭いが鼻につく。
解毒剤ができる前は、誰もが呻くばかりで寝返りも一苦労といった状態だった。
しかし今は毒の苦しみから開放されている。回復した人間の中には、体を起こして近くの兵に話しかけている者もいた。
レオニードは部屋の奥まで行くと、隅で仰向けになって寝ている青年――ボリスの元へ向かう。
こちらに気づいた彼は、鈍い動きで包帯だらけの体を起こした。
毒にやられる前と比べ体の筋肉は落ち、腕は細く、頬もこけている。
ただ、小さくも丸い青の瞳だけは、以前のように生気が宿り、人懐っこい愛嬌を滲ませていた。
「やあ、レオニード。ここにいると退屈するから、何度来てくれても嬉しいよ」
「具合はどうなんだ? さっき来た時は、熱にうなされていたが……」
レオニードが枕元にある椅子へ腰かけながら尋ねると、ボリスは小さく頷いた。
「今は落ち着いている。あー早く元気になって、お腹いっぱいゾーヤ叔母さんの料理を食べたいなあ」
ボリスは力なく笑うと、おもむろにレオニードの後ろへ視線を移す。
何を見ているのかと、レオニードはその視線の先を見る。
部屋の中央では、みなもが負傷兵の傷を診ていた。
城では藥師だけでなく、治療を施す医師も不足していると知り、みなもは手伝いたいと申し出てくれたのだ。
色の薄い肌や髪の人間ばかりいる中で、みなもの黒髪はとても目立つ。
その姿にレオニードは目を奪われる。
が、ボリスの含み笑いで我に返った。


