「……ごめん、もう少しこのままでいさせてくれるかな?」
小さくかすれた声で、レオニードが「ああ」と了承してくれる。
ほんのわずかに肩へ回された腕へ、力が加わった。
「あまり一人で抱え込んで、自分を追い詰めないでくれ。俺では役不足かもしれないが、みなもが少しでも幸せになれるよう力になりたい」
純粋に心配しているのだと分かっていても、みなもの耳には甘い響きを伴って聞こえる。
鼓動が早まり、胸が痛くなる。
自分を受け止めてくれるかもしれない、という期待に心が浮かれそうになる。
同時に、自分の幸せを考えるだけで、暗く重たい罪悪感が全身を駆け巡る。
相反するものが、己の中でぶつかって火花を散らす。
その度に今まで作り上げてきた自分が崩れていく。
無言でみなもは頷きながら、少しずつ己が変わっていくのを感じ取っていた。
まるで水に浮かべ続けた紙のように、ほろほろと溶けていく。
もう元には戻らない。


