黒き藥師と久遠の花【完】

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 夕食を終えて一息ついてから、みなもはレオニードと連れ立って外へ出る。寒さはより一層強くなっており、鼻から息を吸う度に肺が凍えていく。
 ゾーヤの家から向かって左隣の家まで行くと、レオニードが「ここだ」と扉を開けてくれた。

 寒さから逃げるように、みなもは素早く中へと入っていく。
 ゾーヤの所よりは冷えているものの、すでに暖炉へ火を灯しただけあって、ほのかな温もりが出迎えてくれる。

 レオニードも中へ入って扉を閉めると、みなもの隣に並んだ。

「みなも……疲れているところ悪いが、寝る前に話があるんだ。こっちに来てくれ」

 空腹が満たされて眠気はあったが、まだ耐えられる程度。
 みなもがコクリと頷いたのを見て、レオニードは奥の部屋へ行くよう目配せした。

 中へ進んでいくと、赤々とした火が踊る暖炉の前に木製の長椅子が置かれていた。
 みなもが暖炉と向い合って座ると、少し間を空けてレオニードが隣へ座る。

 しばし二人は言葉を交わさず、暖炉の火を見つめる。パチ、パチ、という薪の燃える音が耳に心地よい。

「話って……急に改まってどうしたの?」

 おもむろにみなもが尋ねると、レオニードは軽く息をついてから口を開いた。

「実はマクシム陛下に報告した際、みなもにバルディグの情報を教える約束をした事をお伝えしてきた。それは構わないと言って頂けたが……」

 言い渋るレオニードへ、みなもはわずかに顔を向ける。
 苦しげに目を細めてうつむく彼の横顔に、少しだけ胸が詰まった。
 次にどんな言葉が続くのだろうかと、みなもは不安を胸に押し込みながら答えを待つ。