みなもは目を瞬かせ、首を激しく横に振る。

 きっとみんなと同じように、姉さんも死ぬつもりなんだ。
 もしあいつらに捕まったら、死ぬより辛い目に合うかもしれない。絶対に嫌だ。

 みなもは元来た道を戻ろうとする。
 と、いずみに腕をつかまれ、引き寄せられる。

 ちくり。

 一瞬、みなもの首に鋭い痛みが走った。

「え――……」

 あっという間にみなもは脱力し、その場へ崩れ落ちる。

 地面へ着かぬよう、いずみが抱きとめてくれた。

「ね、姉さん、何を……?」

「護身用に持っていた麻酔針よ。みなもに使うなんて、考えもしなかったわ」

 小さく苦笑してみなもを抱き上げ、いずみは草木が入り組んだ所へ向かった。
 背丈のある草で足元が隠れた木を見つけると、みなもを寄りかからせる。

「私も大好きよ、みなも。元気でね」

 みなもの耳元でそう囁くと、いずみは体を離して踵を返す。

 立ち上がろうとしても、手足に力が入らない。みなもの視界がぼやけ、意識も朦朧としてくる。

「待って……いずみ姉さん」

 やっとの思いで口にした言葉に、いずみは振り返らなかった。

 小さくなっていく背中なんて見たくない。
 けれど遠のく意識に抗い、みなもは姉の背を見続ける。

 いずみが振り向いて戻ってくることを願いながら、懸命に――。