黒き藥師と久遠の花【完】

「二、三年か……長いな」

 不本意そうなレオニードに、みなもはズイッと顔を近づける。

「こういうことは諦めが肝心だよ。それとも、みんなが飽きるまで俺と離れてやっていきたい?」

「そ、それは困る。……分かった、どうにか割り切っていく」

 内心、納得できていないのだろう。まだレオニードの表情は晴れない。
 けれど、これ以上追い詰めると可哀想な気がする。

 みなもはニコリと笑うと、レオニードの頬に口付けた。

「周りがどう騒ごうとも、俺はレオニードと離れたくないから」

「……俺も同じだ」

 やっとレオニードの顔から力が抜け、わずかに微笑み返す。
 
 互いに見つめ合っていると、浪司がゴホンと咳払いした。

「ワシがいること忘れてないか? お邪魔だっていうなら、今日はこれで帰っちまうぞ」

「ごめんごめん、浪司。久しぶりに会えたんだから、たっぷり土産話を聞かせてよ」

 弾かれたようにみなもは浪司に顔を向けると、片目を閉じてから立ち上がった。

「浪司のために、とっておきの珍味を手に入れたんだ。今持ってくるから」

 そう言うと、みなもは二人に背を向けて台所へと向かう。
 思わず頬を緩ませつつ、目に弧を描きながら――。



 レオニードとともに暮らし、たまに浪司が訪れるという日々。
 やっと手に入れた、穏やかで温かな日常。

 この幸せを脅かさないなら、劇でも何でもすればいい。
 むしろ、どんな内容なのか一度観てみたい。

(もし次に公演があるなら行ってみたいな。変装も兼ねて、女性に戻って――)

 何かしら口実を作って少しずつ慣れていけば、遠くない内に女性として過ごすことになっていくだろう。
 女神の役をこなした今、以前よりも早くそうなりたいと思っている。

 
 女性でありながら、戦場に立ち続けた女神ローレイ。
 そんな彼女の強さが、少しだけ自分に宿ってくれたような気がした。