黒き藥師と久遠の花【完】

 しばらく紅茶と菓子を楽しみながら談笑していると、ゾーヤが急に「あっ、そうだわ」と声を上げた。

「みなも、今日はこれから時間取れそう?」

「ええ、大丈夫ですよ。食料の買い出しに行ってから、今日はもう家でのんびり過ごそうと思っていたところでしたから」

 頬にを手を当てて、ゾーヤが大きく息をつく。

「できれば今から行きたいんだけどねえ……レオニードだけで買い出しに行ってもらってもいいかしら?」

 茶目っ気たっぷりな視線を向けられ、レオニードがすぐに頷いた。
 返事を聞いてゾーヤは満足気に頷き返し、今度はみなもへ同じ視線を向けてきた。

「実は女神の衣装を担当するお針子さんたちがね、できれば早くみなもに会いたいって言ってたのよ。だから今から仕立て屋さんに貴方を連れて行きたいの」

 これからお世話になる人たちだから、こちらも早く挨拶をしたい。
 みなもは間を空けずに「分かりました」と答えを返した。