ただ、レオニードは根を詰めすぎてしまう節がある。
 少しでも早く一人前の薬師になろうとする気持ちは嬉しいが、体を壊してしまえば元も子もない。

 みなもは台所へ向かうと、常備してある水出しの茶をコップに入れ、食卓テーブルの上に置いた。

「レオニード、書き終わったら休憩にしよう」

 声をかけながら、朝に採ってきた黄色い木苺を皿に盛り、テーブルの中央へ置く。
 その間、レオニードからの返事はなかった。

 まったく、集中しすぎだよ。……まあ人のことは言えないけれど。
 やれやれと肩をすくめながら、みなもはレオニードの横へ回り、人差し指で彼の肩を軽く叩いた。

 こちらに気づいてレオニードが動きを止めたところを見計らい、みなもは腰を屈めて顔を近づけ――彼の頬へ優しく口づけた。

 驚いたのか、レオニードの肩がわずかに跳ねる。
 そして、ようやくペンを置き、苦笑を浮かべながらみなもを見た。

「すまない、気がつかなかった」

 いつものことだから気にしていないよと、みなもが切り返そうとした時。
 レオニードに謝罪代わりの口づけをされて、唇を塞がれた。

 もう何度も繰り返していることなのに慣れない。鼓動も騒ぐ。
 未だに夢の中にいるような気がして、当たり前の日々だと思えなかった。