「じゃあワシはもう行くぞ」

「早いね、さっき来たばかりじゃないか。もう少しゆっくりすればいいのに」

「実はここから山二つ越えた所にある町で祭りがあるんだ。料理も酒もタダで貰える。早く行かねぇと無くなっちまう」

 相変わらずの食い意地大王っぷりに呆れはするが、浪司の正体を知った今、これがあるから不老不死でも人間で居続けられる気がする。

 引き止め続けるのは悪いな。
 みなもは立ち上がると、「じゃあ、ちょっと待ってて」と言い残して小屋に入る。

 そして小さな皮袋の中に、傷薬と胃薬、銀貨を数枚入れてから外へ出ると、それを浪司に手渡した。

「これ、持ってきてくれた材料の代金。ちょっと色も付けたし、おまけもあるよ」

 浪司は途端に表情を輝かせ、グッと握り拳を作った。

「よっしゃ、これでまたカジノで一勝負できる! ありがとなあ、みなも。またなー!」

 上機嫌に鼻歌を歌いながら、浪司はくるりと背を向け、元来た道を戻っていく。
 その後ろ姿を、みなもは腕を組んでため息をつきながら見送る。

 似たような息が、レオニードからも聞こえてきた。

「……あの調子なら、また近い内にここへ来そうだな」

「……同感だよ。浪司、賭け事はとことん弱いから」