「……みなも、これらも薬になるのか?」

 おもむろにレオニードが耳打ちしてくる。
 少し顔を向けると、彼はジッと昆虫の干物を凝視しながら目を丸くしていた。

 どうやらその虫が苦手らしい。レオニードには悪いが、ちょっと可愛いところがあるなと思ってしまう。
 みなもは悪戯めいた笑みを浮かべ、軽く肩をすくめた。

「うん。特にその虫は皮膚病に効く薬になるんだ。潰す時はかなり臭くて目が痛くなるけど、慣れれば大丈夫」

「そ、そうか……早い内に慣れておかなければ……」

 レオニードが声にならない声で呟く。逃げずにさっさと克服しようとするとこが彼らしい。
 からかう材料が増えたと、みなもが思っていると、

「おお、そうだ。これも渡しておかんとな」

 荷袋を探っていた浪司が、中から何やら布らしき物を取り出し、みなもに向かって突き出す。

 その手にあるのは、草木の模様が刺繍された女物の服。
 
 今度はみなもの顔が強張り、頬を引きつらせた。

「もう男の格好する必要はないんだ。少しは年頃の娘たちと同じことを楽しめ」

 浪司がにやけた顔をしながら、生温かい目でこちらを見てくる。
 ひしひしと面白がっている空気が伝わり、みなもの目が据わり始める。