レオニードは薪割り用の切り株に腰を降ろし、すでに薬草の選別を始めている。
 みなもも隣に腰かけると、黙々とその作業を手伝った。

 カゴの中の薬草が半分ほどになった時。
 かすかに遠くから足音が聞こえてきた。

 手を止めて二人が顔を上げると、村のある方角から山道を歩いてくる人影が見える。
 遠目からでも誰が来たのか分かり、みなもは腕を上に伸ばして手を振った。

 すぐこちらに気づき、彼もブンブンと大きく手を振ってくる。
 近くまで来ると、前に会った時よりも無精髭を濃くした浪司が、にっかりと笑った。

「みなも、レオニード! 元気でやってるか?」

 最後に会ったのは、小屋が完成する間際。
 もう毒が使われていないかを確かめるためだと言って、バルディグに出立したのだ。

 みなもはレオニードと目を合わせた後、浪司に微笑み返す。

「俺たちは元気でやってるよ。浪司も相変わらず元気そうだね」

 髭が濃くなったせいで、熊っぽさが強まってるけど。
 心の中でそう付け足していると、浪司が背負っていた荷袋を降ろして中を開いた。

「元気がなけりゃあメシが美味しく頂けんからな。食う楽しみがなくなっちまったら、生きていてもつまらんぞ。……さて、と。早速だが、これが今回の戦利品だ」

 そう言って浪司はしゃがみ込むと、中を探り始め、取り出した物を次々と地面へ置いていく。
 木の皮やしなびた草、乾燥した木の実や蛇や昆虫の干物――なかなか手に入れられない希少な薬の材料ばかりだった。