ヴェリシアへ戻って来た直後、レオニードはこの首飾りを再び贈ってくれた。
 隣にいることを許してくれた――それだけで十分。他には何も望んでいなかった。

 だから、その後のレオニードが取った行動は予想外だった。

 コーラルパンジーを持ち帰った褒美として彼が求めたのは……兵士を退役するということ。
 そして「みなもから藥師のことを学びたい」と、頭を下げて頼み込んできた。

 一緒に生きていくために、同じものを背負うために、レオニードは薬師になろうとしている。
 まさか彼を弟子にする日が来るとは思いもしなかった。



 薬の材料をいつでも調達できるよう、王都から少し離れた村に隣接する森に小屋を建て、住み始めてから半月が経つ。

 今は傷薬や風邪薬など、森で材料を調達できる薬を中心に作っている。
 すでに簡単な物はレオニードに任せている。初めは一つの薬を作るのに時間がかかり過ぎていたが、最近ではもう慣れて、手際よく作れるようになっていた。

(真面目で勤勉だし、呑み込みも早いから、きっと数年もすれば一人前になる。……良い藥師になってくれそうだな)

 王都を離れる際、マクシム王から「一人前になったら、城の薬師として頑張ってもらうぞ」と言われている。

 あの王様なら、簡単でも薬を調合できる時点で一人前だと言い張りそうだ。
 ふとそんなことを思い、みなもは小さく吹き出してレオニードの後に続いた。