新緑が美しい森の中、真新しい小屋がポツンと佇んでいた。
 近くには小川が流れており、耳に心地よい水のせせらぎが聞こえてくる。それに合わせるかのように、小鳥が歓喜の歌を歌う。

 小屋から近い斜面に登り、みなもは薬草を摘み、腰に下げたカゴへ入れていく。
 少し汗ばみ、顔を上げて額を拭う。
 サァッと冷たい風が吹き、身につけていた首飾りが揺れる。

 新鮮な空気を大きく吸い込み、みなもは辺りを見渡す。
 森の奥から、レオニードがこちらへ近づいてくる姿が見えた。

 最後にひとつ薬草を摘んでから、みなもは斜面を降りてレオニードに駆け寄った。

「お帰り、レオニード。泡吹き草は見つかった?」

「ああ。これで良かったのか?」

 レオニードは背負っていた大カゴを降ろし、傾けて中身を見せてくる。
 黄緑色の葉に赤黒い茎の草が山を作っている。一目見て泡吹き草だと分かった。

「ありがとう、これだけあれば十分だよ。じゃあ次は小屋に戻って、枯れていたり、斑点が出ている草を取り除いて欲しい」

 朝からあれこれ用事を押し付けて疲れたはずなのに、レオニードは嫌な顔ひとつせず、「分かった」と言って小屋へ足を向ける。
 その後ろ姿を、みなもは首飾りの石を握りながら見つめた。