みなもはレオニードと浪司に目配せすると、ナウムの横を通り過ぎる。

 部屋を出る間際、足をピタリと止め、振り向かずに口を開いた。

「本当はお前になんか任せたくないけれど……姉さんを頼む」

 憎くて憎くて仕方ない男。
 でも、いずみを守るために犠牲を払い続けた仲間。

 ようやく離れられると安堵する中、わずかに後ろめたさが滲む。
 
 報われないものをナウムに押し付けて、自分は己の望みのままに生きようとしている。
 仲間の犠牲で手にしたものを喜ぶ自分が、ナウム以上にあさましく感じてしまう。

 次第にみなもの頭がうなだれていく。
 と、おもむろに隣へ並んだレオニードが、優しく手を握ってくれた。

(……レオニード)

 フッ、と胸の中が軽くなり、肩の力が抜ける。

 彼と一緒に生きたい――それをあさましいとは思いたくない。
 共に背負ってくれたレオニードを貶めないよう、自分の選んだ道に胸を張っていこう。

 みなもは顔を上げると、前を見据え、握り合う手に力を込めた。