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 雨が数日続いた後。ようやく空は晴れ上がり、春の陽気が戻ってきた。森は活気づき、鳥のさえずりも一際賑やかになる。

 浪司は「買い出しに行ってくるぜ」と言って、朝から街に出かけてしまった。
 レオニードと二人きりになるのは不安だったが、せっかくの好天を楽しみたいという気持ちは分かったので、みなもは黙って浪司を見送った。

 レオニードもあれから回復して、ゆっくりだが歩けるようになった。久々の天気だからと、みなもは彼を小屋の前にある切り株に座らせ、穏やかな日差しを浴びさせる。

「久しぶりの外だから、気持ちいいだろ?」

 背伸びをしながら、みなもはレオニードに声をかける。
 返ってきたのは――沈黙。

 あれからレオニードは、みなもに何も聞こうとはしなかった。今まで通り最低限の会話と、沈黙しかない。

 どうすれば話をしてくれるだろうか。
 みなもが探るように横目でレオニードを見ると、彼は眉間に皺を寄せて遠くを眺めていた。

(もう少し肩の力を抜いたほうが、傷の治りも早いのにな)

 どうしたものかと、みなもは首を傾げて考える。ふと、今日の夕飯のことが頭をよぎり、「あっ」と声を上げた。

「レオニード、ちょっと一緒に来てくれるかな? 今から湖に行って魚を釣りたいんだ」

 気難しそうな顔を変えずに、レオニードは首を振った。

「すまないが、今はそんな気に……」

「少しでも体を動かしたほうが、早く回復できるよ。ついでに食料も確保できるしさ」

 みなもの言葉にレオニードの耳が、ぴくりと動いた。

「……分かった」

 小さくて不本意そうな声だったが、心なしか彼の顔が緩んだように思えた。