レオニードが何か言いかけて、口をつぐむ。
 しばらく目を細めてこちらを見つめた後、彼は首飾りを握りしめた。

「分かった、預からせてもらう」

 受け取る気はないと突っぱねられるかもしれない、と覚悟をしていたけど、思った以上にあっさり了承してくれて良かった。

 みなもはホッと胸を撫で下ろし、顔から力を抜く。

 その刹那、顎が持ち上げられ、レオニードの唇が重ねられた。
 何度となく繰り返してきた口づけなのに、初めて交わした時のように胸が高鳴る。
 
 少しでも長く触れ合いたくて、みなもはレオニードの首に抱きつく。
 こちらの望みに応えるよう、彼の腕が背中に回され、強く、強く、抱き締めてくれた。

 みなもが息継ぎをするために、唇をわずかに離す。
 と、レオニードの手が頬に当てられ、間近に瞳を覗き込まれた。

「もう一度、必ずみなもにこの首飾りを贈る。だから……明日は絶対に死なないでくれ」

 一切の迷いを見せない、揺らがない声。
 こんな自分を受け入れてくれるのだと考えるだけで、嬉しさと彼への懺悔が膨れ上がって、胸が痛くなってしまう。

 けれど、今はこの痛みがあることを幸せに思う。
 きっと明日が過ぎても、彼と一緒にいられる。そんな確信を与えてくれるから。

 みなもがかすかに頷いた後、レオニードが深く口づけてくる。
 胸の痛みがさらに増して、思わず目をきつく閉じた。

 絡み合う吐息と彼の体温を、より強く感じてしまう。
 これを最後にしたくない。

 今まで生きてきた中で、こんなに生きたいと願ったことはなかった。