こんな自分でも受け入れてくれるんだ。
 そう思うと胸が締め付けられ、無意識にみなもは彼の胸に縋っていた。

 ぎゅっ、と肩を抱くレオニードの力が増した。

「……願わくば、二度と他の人間には向けないでくれ」

 耳元で低く囁かれた声に乗り、レオニードの息遣いが聞こえてくる。
 罪悪感は膨らみ続けるのに、また触れ合えることが嬉しくて仕方がない。
 みなもは小さく「うん」と頷くと、レオニードへもたれかかり身を預ける。

 触れている所から熱が生まれ、全身に広がっていく。
 痛いほどに強ばっていた心が、和らいでいくのが分かった。


 もうこの温もりを手放したくない。
 ただ、レオニードが許してくれても、自分が自分を許せない。
 けじめをつけなければ――。


 みなもは細長く息を吐き出してから、「レオニード」と声をかけた。

「ちょっと手を出してもらえるかな?」

 わずかにレオニードが顔を上げ、言われるままに手を差し出す。
 躊躇いがちにみなもは懐から首飾りを手にすると、彼の手の平に載せた。
 そして体を起こして、間近になった彼の目に視線を合わせた。

「一度、貴方にこれを返すよ」

「君に贈った物だ。返す必要は――」

 首飾りをこちらに戻そうとしたレオニードの手へ、みなもはそっと上に重ねて制する。

「嫌な話だけど、ナウムが言っていた通りのことを俺はやってきたんだ。しかも意思を取り戻した状態で……そんな人間が貴方と今まで通りでいたいって言うのは、図々しいと思う」

 また瞳が潤みそうになり、言葉を止める。
 これ以上、泣いて同情を請うような真似はしたくない。

 みなもは目に力を入れて涙を押し込めると、声が震えないよう、慎重に口を開いた。

「……だから目的を果たしてヴェリシアへ戻った時、俺がレオニードと一緒に居続けることを許してくれるなら……貴方の手で、この首飾りをもう一度かけて欲しい」