城内は外観と同じように、あまり過度な装飾が施されておらず、無骨な印象を受ける。
 通路に敷かれた赤絨毯と、点々と並ぶロウソクの灯りが、心なしか浮いているように見えた。

 しかし階段で二階に上がると、陰湿さのあった両壁や天井は明るい薄茶色に変わり、並んだ窓から入ってくる光を受けて、温かな雰囲気を醸しだしていた。

 廊下を歩き続け、横に広い扉の前でナウムは足を止める。

「この中にいる方に会ってもらう。みなも、中に入ってオレが跪いたら、お前も横に並んで同じようにしろ」

 つまりナウムよりも地位のある人と対面するのか。

 今は逆らわないほうがいいと、みなもは無言で頷く。
 こちらが了解したことを見てから、ナウムは姿勢を正し、ゆっくりと扉をノックした。

「ナウムです、ただいまヴェリシアから戻りました。お目通りをお願いします」

「待っていたぞ。入れ」

 返ってきたのは、なんとも堂々とした威厳のある男性の声。
 まだ姿を見ていないのに、漂う威圧感にみなもの胸が重たくなった。

 ナウムが「失礼します」と言って、扉を開けて部屋に入っていく。
 気後れしながらも、みなももすぐに部屋の中へと足を踏み入れた。