「安心しろ、ワシはみなもの味方だ。そして、同じものを追い続けている仲間でもある。……みなもはまったく気づいていないがな」

「……浪司、お前は一体何者なんだ?」

「詳しい話は、ワシにお前さんの覚悟を見せてくれたら話す」

 声には出さないが、浪司は目を大きく開いて「どうなんだ?」と問うてくる。

 そんなことは考えずとも、彼女に惹かれ、守りたいと思った瞬間から答えは出ている。

 レオニードは怯まずに浪司を見据えた。

「俺はみなもの抱えているものを、共に背負いたい。もう彼が自分を偽らなくても生きていけるように――」

「本当にレオニードはクソ真面目だ。まだみなもの嘘に合わせてんのな」

 真剣に答えたはずなのに、なぜか浪司の目は面白いものを見つけたとばかりに笑っていた。

「ワシはアイツが女の子だっていうのは、ずっと前から知っている。だからワシの前では『彼』扱いしなくてもいいぞ」

「そ、そうか……」

 ホッと安堵すると同時に、少しからかわれているような気分になる。
 複雑な心境にレオニードが口を堅く結んでいると、浪司は歯をニッカリと見せた。

「これだからレオニードは、みなもの信用を得られたんだな。……なら、ワシもお前さんを信用しよう」

 浪司は軽く目を閉じて深呼吸する。
 そして再びまぶたを開いた時、彼の目から人懐っこい明るさが消えた。

「みなもがフェリクス将軍の解毒剤を作った時から、ワシもアイツの仲間がバルディグへいると確信した。だからワシは独自にバルディグの密偵を見つけて、情報を聞き出したんだ。ナウムがみなもを連れて行きたがってるっていう情報をな」