「きりーつ、れーい」
倦怠感を催した声と共に立ち上がり、

「「おはよーございまーす」」


それぞれの面倒臭そうなバラバラの声の中で、俺はしっかりと挨拶した。




此処は、私立の中高一貫校の『吾妻学園』だ。


俺の家は、父は外交官ということもありあまり居なくて、母親は、妹を産んでまもなく蒸発した。
なんでも、『やらなきゃいけない事があるのっ』とか、かっこいいこと言って居なくなったらしい。
俺は当時2歳かそこらで、母のことは覚えていない。

まあ、そんなわけで、公立の高校やら入ると手続き期間とかあって面倒になるので、父が居る間に私立に編入した。

俺は中3の時で、妹が中1の頃だ。

元々、幼なじみで孤児の炬燵は、国からの援助で無料になるらしく、私立校に入っていたし、中学校の友達と別れるのは辛かったが、さほど悲しくはなかった。

今でも、会おうと思えば会えるし、よく遊んでいる。



「――白卯、遅刻しないで良かったね」



一足以上、はやく学校に行った炬燵が朝の学活が終わり近づいてきた。


「ったく、お前から「一緒に行こう」って行ったくせに」


口をとがらす俺に、炬燵は、むっ、として腕を組んだ。

「仕方ないでしょ、生徒会は生徒の鏡!模範生で居なきゃ!!」
「だったら、山茶花は何なんだよ……」



泉宮 山茶花――、生徒会会計の美男子。不良らしく不良では無い。金髪で、いつもヘッドフォンで音楽をきいている。しかも、かなり喧嘩沙汰は多いようだ。だが、そういうのと人にたいしては無関心というのが相俟ってもてる。

山茶花こそ、生徒会の一員として恰好を変えるべきだ。


そんな彼は前代からずっと生徒会をやっている。何故かといえば、前生徒会長(今年度卒業で任期は終わっている)の熱烈な支持だとか。

我が学園では推薦されたら必ず立候補しなければならないという規則のせいだ。

ちなみに、俺も生徒会の一員で、……副会長だったりする(炬燵が推薦した為)。


たまたま、今期は他に副会長立候補が居なかったから流れでこうなった。