そうして楽しい時間はあっというまにながれ、いつの間にか夕方になっていた。


「め〜い!
そろそろ帰るぞ〜。」



「はーい。
それじゃあね亜美ちゃん!」


「ん!バイバイ」







そうしてあたしと夢汰は島波くんちを出た。


帰りは上り坂だった。
セミの鳴き声が行きの時よりも、大きくなっているような気がした時。
あたしは思いきって夢汰に聞いてみた。


「ねぇ、夢汰?」

「んぁ?なに?」


ゴクリ


あたしは一度生唾をのんだ。

「夢汰って好きな子いるのー?」

一瞬、間があいた後、

「おるよ。」

と、静かな優しい声で話してくれた。

「その子と付き合ってるの?」

あたしは聞いてみた、
すると夢汰は悲しそうに


「付き合ってねぇよ。
相手はたぶん俺が思っていることすら気づいてねえ。」

「ふーん。そうなんだ、悲しいね。夢汰の恋───…。気持ちは伝えないの?」


「無理だな。きっと」

「そっか。」


あたしたちはそれだけ言うと家に着くまで何も話さなかった。

聞こえるのは、
セミたちの合唱だけだった。