恐る恐る食べると美味しかった



「私、食べたことなかった。

こんなに美味しいもの。」


温かくて優しい味がした



なんだか切なくなって涙がこぼれた




「あの人は私たちにご飯さえくれなかった」


いつもコンビニの余りものを

優しい店長さんがくれてた


だから一度もあの人の手作りのものを

食べたことが無かった




渓に話すと何も言わずに

ぎゅっと抱きしめてくれた



「それ、俺のお袋が作ったんだ。」


渓のお母さんが?

わざわざ?



「茜には海のことで悪いことしたって。」


「温かい。

渓も海も凛も水城くんも、ありがとう。」




それから学校には戻らず


渓の両親のことを聞いたり

私のことを話した




途中途中涙が流れたけど

そのたび渓は抱きしめてくれた



いつもなら阻んでいるのに


今日は妙に誰かの温もりに

触れていたかった