今まで聞いた中で一番
優しい声
大嫌いな男の前だけど
どうしても思いが溢れて
私は涙を流した
「ばかぁー。」
どうして?
そんなに優しいの?
あの頃にはもう戻れないんだよ?
優しくしてもらう理由なんて
ひとつも無い
むしろ恨まれて当然なのに
渓は頭をポンポンっと撫でながら
私が泣き止むまでずっと
抱きしめてくれた
渓の甘い香りが気持ちを落ち着かせる
「落ち着いた?」
「・・・・。」
ドクンッ
ドクンッ
静まれ!
「茜?」
「名前で呼ぶな!
それに関わるなって言っただろ。」
胸の鼓動が渓に聞こえてしまいそうで
緩んだ渓の腕をすり抜ける
「茜、強がっていること
俺には分かるからな。」
強い眼差しが
痛いほど私に降り注ぐ



