それから、私は病室を出て汐里にさよならをした



汐里は笑ってハイタッチをくれる。


「じゃあね、茜ちゃん。」


「またね、汐里。」



私も笑って病院を出た。



空気が澄んでいて柔らかく包み込まれる。



本当の父が今どうしてるとか、

これからどうするかとか。


今はどうでも良くて、私はここに居て

渓、海、水城くん、凛。
かみねぇ、葵が私の近くにいてくれる。



それだけで充分だ。



傷ついて、傷つけて沢山泣いて笑った。


今では、思い出に過ぎない。

まだ引きずる事もあるけど、私は私でいる。


みんなの絆があったから。

私は私でいられる。



私は後ろにいる皆の方を向く。



「私、決めたよ。

今、一番好きな人。」



凛達は意味を理解したのか、険しい顔になる。


三人は目を閉じて私を待つ。

私はその人の所に歩き柔らかく抱きついた。



「凛、大好き!」


「えっ。えぇー!!!!」



三人が叫ぶ声はどこまでも高い空に消えていった。



かみねぇと葵はぽかんと立ち尽くしてる。



私の本当に好きな人?



それは



まだ内緒。



おしまい。