~渓side~


茜が病院に運ばれて数時間後



俺たちは病室の前でじっと茜が目を覚ますのを待っていた


時計の秒針の音だけが鼓膜を揺らす



誰も声を発しない。

顔も合わせない。



あまりに歪みすぎた真実に言葉さえ失ってしまう


俺らでも、こんなになっているのに

茜はどうなってしまうのだろう。




父親だと思っていたものは幻で

それが母親の元彼だなんて・・・。




俺は深呼吸して天井を眺めた



ガラッ


「お母さん・・・・。」



病室から出てきたのは泣いている女の人と葵ちゃん


二人は俺らが声をかける暇なくどこかへ行ってしまう




嫌な予感がした。



海や薫もそう感じたらしく


言葉もなしに病室の扉を開けた