狼少女と王子様




「お姉ちゃん!」


目を開けると消毒液の匂いが
つぅんと鼻を刺激する



真っ白な部屋に見覚えがあった


病院?


なんで・・・。




「あぁっ。」


また叫びそうになって口を押さえる



涙がシーツに染込んでいく



ぎゅっと温かい体温に包まれる


渓?

海?

それとも水城くん?



ふと、顔をあげるとそこには

見知らぬ女の人




私は包みこんでいた体を思いっきり押した


誰?


その人をキッと睨む


触らないでよっ。




「茜ちゃん・・・。」


少しその人は寂しそうに眉を下げる



あ、見たことある。

この表情。



「あの、最上のお姉ちゃん?」


「そうよ。茜ちゃん。」




なんで、気づかなかったんだろう。


葵に初めて会えた時。

あの子は最上と言った。



栞ちゃんの旧姓だったって。



まぁ今さら、それが分かったって何も変わらないけど。